手を触れただけで世界は変わる

そうして、最近、ひとつの扉を開けるようなものにであった。それは、「ただ触れる」ということの大切さだ。取り掛かるのが億劫だった仕事の書類を手に取りめくってみる、片付けるのが嫌でしょうがなかった食器に、手をつけていなかった勉強のテキストにただ触れページをめくってみる。会うことを避けていた人にただ会ってみる。それだけで不思議なほど、日常の中が動き始めていきます。

良いものにも嫌なものにも、実際に手で触れ、対面してみるだけで、自分が作り上げていたそのモノについてのイメージは劇的に変わっていきます。それは、ストレス・苦痛を感じないとか、得をするとか、効率的だとかそういうことではないのです。日常に自分の実感を伴わせるような作業なのです。無味乾燥した事象に自分の手垢をつけながら触れていく、自分が歩んだという証を刻んでいく。酸いも甘いもきちんと味わうこと。そうすることが日常に彩りを与え、今ここで呼吸をして心臓が鼓動している一人の人生を作っていくのでしょう。苦痛の無い幸せを放棄して、生きている今に触れたとき、日常的だけれどとても特別なものを以前より見つめられるかもしれません。

凹レンズ 〜まとまりのない日記〜